霊能の家系と逃走劇――呪われし血統がサラリーマンをやってみた結果、ただいま絶賛入院中。

霊能の家系と逃走劇――呪われし血統がサラリーマンをやってみた結果、ただいま絶賛入院中。

「霊能者の家系に生まれた者は、まっとうな社会では暮らしていけない」

祖母から耳にタコができるほど聞かされた言葉だ。この手のおどろおどろしい言説に対し、「またまた、霊感商法の脅し文句でしょ」と笑い飛ばせればどれほど楽だったか。しかし残念ながら、これは代々の先祖たちが血反吐を吐きながら実証してきた、我が家の「元祖・取扱説明書」なのだから質(たち)が悪い。

そもそも「生きられない」と言われる理由は、幽霊が見えてビクビクしているからではない。真の理由は、この体質が持つ「余計なお世話すぎる浄化作用」にある。

この血筋の人間は、歩く空気清浄機みたいなものだ。ただし、フィルター性能が高すぎて、世の中のゴミや邪気、人のドロドロした業を片っ端から自動吸引してしまう。

結果としてどうなるか。家庭を持てば嫁ぎ先に昼ドラレベルの波乱を巻き起こし、伴侶はまるで何かに取り憑かれたかのように酒やギャンブルへ一直線。それを「私がなんとかしなきゃ!」と無駄に高い責任感で切り盛りしようとするあまり、最終的にはストレスで特大の大病を患う。

要するに、「存在自体が人間関係のデバフ(弱体化)であり、末路は自滅」という最悪のスペックなのだ。

古来、霊能者が人里離れた深山幽谷にひっそりと隠れ住んでいたのは、神秘的な雰囲気を出すためではない。単に「下界に下りるとロクなことにならないから、引きこもるのが一番コスパが良い」という痛切な生存戦略だったわけだ。

だが、根がひねくれ者である私は考えた。

「知るか。私は普通に会社員になって、普通に給料が欲しい」

この因縁の血統から脱走し、一般社会の現場へと飛び込むという大暴挙に出たのだ。

呪いすら労働力でオーバーライドした社畜の末路

待っていたのは、怒声と締め切りが飛び交う殺伐とした現場だった。しかしどうだろう。人知を超えた因縁やドロドロした霊障に比べれば、締め切りに追われる日々など「ただの平和な日常」に過ぎない。水を得た魚のようにハッスルした私は、社畜適性の高さを遺憾なく発揮し、気がつけば現場を任されるまでになっていた。

「ハハハ! 見たか先祖ども! 呪いなんて労働力でオーバーライドしてやったぞ!」

と高笑いしていたのも束の間、血の理(ことわり)はそこまで甘くなかった。

ある時期から高熱が下がらなくなり、仕事中に白目を剥きかけることが増えた。さすがにマズいと病院へ駆け込んだ結果、医者から言い渡されたのは爽やかな笑顔での「がんです」という一言。ドクターストップがかかり、私はあえなく戦線離脱となった。

……うん、まあ、先祖の言う通りだった。

大人しく実家の奥で引きこもっていれば、このがんというイベントももう少し先のことだったのかもしれない。因縁の力で社会に馴染んだつもりが、結局は自分の命を限界まで前払いしていただけだったというオチだ。我ながら、なんとも笑えないコメディである。

だがまあ、倒れる直前まで「普通の人間」として社会の揉みくちゃに揉まれ、しっかり働けたのだから良しとしよう。病室のベッドの上で、私は今日も「やっぱり先祖の言うことは聞いておくべきだったな」と、ちょっとだけ反省している。ほんのちょっとだけだが。

病室という要塞でポメラを叩く

……さて、反省はこのくらいにして。

術後の激痛が若干やわらぎ、麻酔の霧が晴れてくると、いよいよ猛烈な退屈が襲ってきた。頭がはっきりしてくればくるほど、この病室という狭い空間が耐えがたくなってくる。

そこで私は、この退屈な空間をいかに機能的な秘密基地へと改修するかに思考をシフトさせた。

昨日、入院着を「浴衣タイプ」から「甚平タイプ」へチェンジしたのだが、これが大正解だった。手術痕を気にして「ズボンの上げ下げは面倒だろう」と気を回していたが、少し動けるようになってみれば、前がはだける浴衣の方が圧倒的に邪魔くさい。これから入院する予定のある方は、迷わず甚平タイプをお勧めしておく。

さらに、ベッド周りの横さく(柵)も一見邪魔に見えて、起き上がる時の命綱として必須のパーツだし、電動ベッドの傾斜ボタンも自力で動けるようになると「自分で起き上がった方が早いわ」と判明する。

こうして手の届く範囲に必要なものを完璧に配置し、快適な病室の要塞を完成させた。

ベッドに深く腰掛け、整えられた己の要塞を満足げに見渡してから、私は小さく鼻で笑った。

「……ふん。ガンなんぞ大したことないな」

血筋の重い因縁や、人のドロドロした執着に比べれば、物理的な細胞のエラーなどむしろ話が早い。病院に行けば切るなり何なり対処法がある分、目に見えない呪いよりよっぽど健全で素直な相手ではないか。

万全の要塞(ベッド)を構築した私は今、愛機であるテキスト入力専用機「ポメラDM200」を膝に載せている。病衣を着た作家気取りで、カチカチとキーボードを打ち鳴らす姿は、客観的に見れば奇妙そのものだろう。

だが、血の因縁に振り回され、社会で揉まれ、がんで撃沈したこの経験は、あまりにも格好の「ネタ」だ。

タダで倒れる気は毛頭ない。この病室でポメラに叩き込んでいる文章が、いずれどのような形になって世に出るか――まあ、気長に楽しみに待っていてほしい。

因縁に抗った女の泥臭い生存戦略は、まだまだここからが本番だ。

【後日談(2026年現在の付記)】

……と、2020年の病床でポメラをカチカチ叩きながら粋がっていたわけだが。

当時の私が病室で書き殴っていたこの「負け犬の遠吠え」のようなネタ群は、その後無事に陽の目を見ることとなった。

この時書きためた原稿や血の葛藤、そして一般社会で得た地這いの知恵を結実させた書籍が、のちに上梓された『生存のための霊性シリーズ』である。

人生、どこでどのネタが化けるか分からないものだ。病室で甚平を着ながらポメラを発狂気味に叩いていた自分に、「お前の悪あがきは、ちゃんと一冊の本になったぞ」と教えてやりたい。

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久遠迪知|くどうみちし

久遠迪知|くどうみちし

スピリチュアルアウェイクナー/カミツカサとして、沖縄の神んちゅの系譜に連なる霊能者です。 霊視鑑定歴は30年。ココナラでは長年プラチナランクをいただき、多くの方の人生に寄り添ってきました(2026年4月退会)。 オーラリーディングや前世リーディングを通して、魂のテーマ、家系の流れ、今世での課題を静かにひもときます。 霊視に基づく霊査レポートには定評があり、「自分の輪郭が見えた」「生きる位置が分かった」とのお声を多くいただいてきました。 不安をあおるのではなく、あなたの尊厳を守りながら、魂が本来の位置へ戻っていくための伴走者でありたいと願っています。。